第1曲  
                  [語り手] 
                  お静かに、おしゃべりしないで 
                  今なにか起きるかお聴きください。 
                  あそこにシュレンドリアン氏(旧弊居士)が、 
                  娘のリースヒェンを連れてやってきます。 
                  まるで、蜂蜜をむさぼる熊みたいにうなって。 
                  リースヒェンが彼に何をしたかを、ご自身でお聴きください。 
                   
                  第2曲 
                  [シュレンドリアン] 
                  まことに子供というものは、 
                  厄介千万ではござらぬか。 
                  私がいつも常日頃 
                  娘のリースヒェンに言うことは 
                  実を結ばずにおさらばさ。 
                   
                  第3曲 
                  [シュレンドリアン] 
                  この悪子、こらどら娘、 
                  ああ、いつになったら私の願いがかない、 
                  コーヒーをやめてくれるのか 
                   
                  [リースヒェン] 
                  父さん、さんなにキンキンしないでちょうだい、 
                  もしも毎日3回のコーヒーが飲ましてもらえなきゃ、 
                  私、ほんとうにつらくって、 
                  乾からびた山羊の焼肉みたいになっちゃあわ。 
                   
                  第4曲(第4曲) 
                  [リースヒェン] 
                  あぁ、コーヒーってなんておいしいの、 
                  千回のキッスよりもすてき、 
                  マスカットのワインよりも軽いわ。 
                  コーヒー、コーヒーがなくっちゃ 
                  もし私を慰めてくれるつもりなら、 
                  ああ、コーヒーを入れてちょうだい。 
                   
                  第5曲 
                  [シュレンドリアン] 
                  もしもおまえがコーヒーをやめないのなら、 
                  結婚式にも行かせないし、 
                  散歩もしてはならんぞ。 
                   
                  [リースヒェン] 
                  ええどうぞ 
                  でもコーヒーだけはゆるしてちょうだい。 
                   
                  [シュレンドリアン] 
                  なんてとんまな娘を持ったんだ。 
                  もう流行の幅広スカートなんか買ってやるもんか。 
                   
                  [リースヒェン] 
                  よくわかったわ 
                   
                  [シュレンドリアン] 
                  窓辺にたって、 
                  道を行く人見ることもならんぞ。 
                   
                  リースヒェン] 
                  それでもけっこうよ。でもどうかお願い、 
                  私にコーヒーをゆるしてね。 
                   
                  [シュレンドリアン] 
                  それからまた私の手から、 
                  銀や金のリボンを 
                  ずきんにのせてもらうこともないのだぞ。 
                   
                  リースヒェン] 
                  ええ、ええ、でもどうか私の楽しみをゆるして。 
                   
                  [シュレンドリアン] 
                  このだらしないリースヒェン、 
                  それなら何でも私に許すのかね。 
                   
                   | 
                  第6曲 
                  [シュレンドリアン] 
                  強情な娘たち 
                  その心を得るのはたやすくない。 
                  それでもぴったり、つぼに当たれば、 
                  おお、そうすればうまくいく。 
                   
                  第7曲 
                  [シュレンドリアン] 
                  さあ、お父さんの言うことをおきき。 
                   
                  [リースヒェン] 
                  なんでもよ、ただコーヒーはだめよ。 
                   
                  [シュレンドリアン] 
                  よいとも、それならおまえ 
                  良い人を得られなくてもしかたがない。 
                   
                  [リースヒェン] 
                  ええ、ええ、お父さん、良い人ですって。 
                   
                  [シュレンドリアン] 
                  誓って言うが、そいつを許さんのだぞ。 
                   
                  [リースヒェン] 
                  私がコーヒーをやめられるまでですって。 
                  では、コーヒーには手をつけぬままでいましょう。 
                  父さん。聴いて、私、もう飲まないわ。 
                   
                  [シュレンドリアン] 
                  それでこそ、おまえ良い人をもらえるのさ。 
                   
                  第8曲 
                  [リースヒェン] 
                  今日のうちに、 
                  お父さんそうしてちょうだい。 
                  ああ、良い人だって。 
                  ほんと、それが私にぴったりよ。 
                   
                  もしもすぐにそうなるのなら、 
                  もしも私がついにコーヒーにかえて、 
                  もしも私がベットに行くまえに、 
                  すてきな良い人をもらえるのなら。 
                   
                  第9曲 
                  [語り手] 
                  そこで老いたるシュレンドリアンは捜しにいきました。 
                  娘のリースヒェンのために、 
                  早く良い人を見つけることができるように。 
                  ところがリースヒェンはひそかに言いふらしたのです。 
                  欲しいときにコーヒーを沸かしてもかまわないって、 
                  自分で約束して 
                  結婚同意書に記入してくれないなら 
                  どんな求婚者でも 
                  家には入れません、とね。 
                   
                  第10曲 
                  [全員] 
                  猫はねずみがやめられぬ。 
                  娘たちはいつでもコーヒー党。 
                  母さんコーヒー大好きで、 
                  婆ちゃんだって飲んでいる。 
                  なのに娘たちばかりいびるとは、 
                  それこそとんと聞こえません。! 
                   
                   
                   
                   
                   
                   
                   
                   
                   
                   
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