>日本文学の中のコーヒー
北原白秋 『六月』
白い静かな食卓布、
その上のフラスコ、
フラスコの水に
ちらつく花、釣鐘草、
紫の、かゆい、やさしい釣鐘草、
さうして噎びあがる
苦いコーヒーよ、
熱い夏のこころに
私は匙をまわす。
高窓の日被
その白い斜面の光から
六月が来た。
その下の都会の鳥瞰景
幽かな響きがきこゆる、
やはらかい乳房の男の胸をへつけるやうな・・・
苦いコーヒーよ、
かきまはしながら
静かに私のこころは泣く・・・・
北原白秋
『六月』 「日本の詩歌9」
中央公論文庫
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